日本のフィロソフィが新型「日産 アリア」に魂を宿す

そのたたずまいに日産デザインの未来が見える

2020/07/15
  • クルマ・技術
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日産の新型EVクロスオーバー「日産 アリア」は、開発から製造までを一貫して国内で手掛けました。2019年の東京モーターショーで披露した「ニッサン アリア コンセプト」をベースとする「日産 アリア」は、日産EVブランドの新たなアイデンティティを象徴しています。そして、先進的な電動化技術やインテリアレイアウト、そしてシームレスな知能化技術がもたらす新しい時代の先駆けとなるクルマです。

「日産 アリア」は、日産のグローバルデザイン担当専務執行役員であるアルフォンソ アルバイサ、エグゼクティブ デザイン ダイレクターの田井 悟、そしてシニア デザイン ダイレクターのジオバーニ アローバが率いるチームによってデザインされました。彼らは当初から日本のアイデンティティを「日産 アリア」で表現したいと考えていました。そこで、日産独自の方法で日本的なフィロソフィを「日産 アリア」に取り入れました。

「シンプルで力強く、かつモダンな表現で、日本のDNAをこのクルマの魂に吹き込みたいと考えました。このクルマに『タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム』を授け、グローバルデザインチームは、キーとなる日本の言葉から着想を得て、『日産 アリア』のスリークでシームレス、シャープでパワフルなフォルムを生み出しました」と、アルバイサは語りました。

「日産 アリア」:日本本来のアプローチによって具現化されたクルマ

おもてなし(Omotenashi

古来の定義:この時、この場所、あなたのためだけに。一期一会の精神で期待を超える心づくしを。(想像を超えるホスピタリティとサービス)

「おもてなし」は、お客さまのニーズを予想して、先回りしてサービスを提供するという、期待を超えるホスピタリティを意味します。「この一瞬はあなたのためだけに」という気持ちを伝える1つの方法です。

アルバイサ:「『おもてなし』は、私たちが考える日本DNAの根底を支える概念です。それは、圧倒的なパワー、利便性あふれる装備、プレミアムな素材だけを強調するのではなく、『日産 アリア』に歩いて近づくシーンから、実際に運転し、カーライフを楽しむシーンに至るまで、あらゆる場面で、皆さんの日常生活をより新鮮でワクワクするものに変えていきます。私たちは『日産 アリア』の『おもてなし』をよりモダンでデジタルな方法で表現しました。それは細やかな気配りに感じることができます。例えば、車内に乗り込むと、すべてのアイコンが消え、ドライバーに分かりやすいようスタートスイッチだけが光ります。そして、スタートスイッチが押されると、すべてのアイコンとスイッチがやわらかに点灯します。波のような2画面のディスプレイと大きなヘッドアップディスプレイは、重要な情報を分かりやすく表示し、操作ボタンが最適に配置されています。あらゆる機能が精巧につくりこまれており、ラウンジのような雰囲気を醸し出す行燈ライティングも採用しました。」

粋(Iki

古来の定義:日常にもたらされる最先端で簡明な新しさ。

「粋」を単刀直入に訳すと「シック」ということになります。日産のデザイナーにとっては、斬新で先鋭的な創造行為やその創造物が「粋」であり、既存の価値の再解釈も含みます。

田井:「『粋』は、『日産 アリア』の先進的なデザインランゲージとテクノロジーを示すという点で、このクルマを表現するのに最もふさわしい言葉の1つといえるでしょう。具体的にはコネクティビティ分野での新発想や、既存のセグメント観に捕らわれない形の表現など、クルマを『再発明』する気概はこの『粋』に基づくものです。新技術をこれ見よがしに主張する大げさな表現の対極にあるのが『粋』です。エクステリアでは、そこにあるだけで伝わる存在感、例えばシャープなノーズやショルダーのハイライトなど、シンプルであるが故に印象に残る美しさ。インテリアでは、ハプティックスイッチのように、必要な時だけ現れ不要なときは邪魔にならないよう控えている『形を消すデザイン』の考え方。これらは最も純粋に『粋』を表現したものです。」

傾く(Kabuku

古来の定義:あえて取り入れる大胆かつ多様性のある表現。

「傾く」とは、社会的な慣習や決まりきった予定調和への反動として現れる、時に奇妙で、普通でない、挑戦的な発想や形状をポジティブに活用することです。それは、先導者やリスクを恐れない者だけから生まれる発想で、他とは違う考え方のもとに表現します。

田井:「日産デザインの『普通』に対するアンチテーゼは、新しいデザインのインスピレーションを求めることにとどまらず、乗員の体験をより価値あるものにするための方法を追い求めるものです。私たちは、それが何であるのかということだけでなく、何になり得るのかを考えます。『日産 アリア』には、『傾く』ことによるアプローチを見ることができます。例えば、EVだからグリルをなくすというのではなく、『シールド』という新しい機能とシグネチャー表現を兼ねたものとして再デザインし、更に高いレベルの運転支援機能を実現しました。独自の挑戦的なフロントバンパーの空力処理もその一例です。私たちは、より直感的でシームレスにつながる未来を追求し、ピュアでシンプルな日本オリジナルのEVデザインを採用しています。」

間(Ma

古来の定義:構造を活かした卓越した空間の使い方。

「間」とは、空間を複雑にすることなく最大限に生かす技術です。

アルバイサ:「建造物において『間』は、日本ならではのミニマリズムの一つの形態です。引き算をしていくのではなく、さまざまな要素を調和させるのが『間』で、外観と内装にそれが反映されています。外観では、前から後ろに向かって一本のダイナミックなラインが走っています。このラインをつくり出すボディは大変彫刻的で、このラインをより美しく見せます。また、内装はお客さまの毎日の生活を反映したすっきりとしたものです。機能の複雑さを排して、想像を超えるほどオープンでワクワクする空間に仕上げています。」

整(Sei

古来の定義:巧みな手技で調和された構造と細部。

「間」が卓越した空間の使い方だとすると、「整」は「間」を具体化する方法であり、形の要素やデザインをクレバーにまとめる処理を指します。

アルバイサ:「デザイナーは、デザインスケッチの純粋さを具体化する術を常に追い求めています。『日産 アリア』では、『間』の面を張るための伸びやかなエクステリアキャラクターラインそのものが『整』です。潔く一本水平に走って光るテールランプの機能美もそうですね。室内では、分割線をすべてなくしたハプティックスイッチのピクトグラムだけが整然と並ぶ作法にも、『整』が表れています。そのインスト周りは、見た目はシンプルでありながら、マジックのように多彩な機能を見せています。」

移ろい(Utsuroi

古来の定義:自然によって生み出された流動性と非対称性が生み出す美しさ。

日産デザインチームにとって、「移ろい」は、自然界由来の絶えず変化し、形も非対称である様子で、均整のとれた、流れるような形の表現のインスピレーションの元になる言葉です。

田井:「『移ろい』は『日産 アリア』全体に散りばめられています。エクステリアでは、リヤクオータパネルの張り出しと、ノーズからリヤエンドまでショルダーの位置で1周つながったキャラクターラインの創り出すボディ全体単位の動きのダイナミズム。インテリアでは、フロントから途切れずドアトリムにつながるインストパッドの流れがエクステリアの動きに呼応しています。銅色の水平のフィニッシャー、インテリジェントなライン照明。行燈ライティングは、まるで後ろに続いて室内空間全体を包むような動きを感じさせます。」

縁側(Engawa

古来の定義:内と外/主体とその世界/こことそこ/というように定義できない何かの境界を定義するもの。

伝統的な日本の家屋には、外縁に沿って狭い廊下が続きます。このスペースを「縁側」と呼びますが、「縁側」はポーチのように閉め切ることも、外へ開くことも可能です。内と外、今ある場所と次にある場所の間に存在する場所、定義し難いあいまいな空間の境目といえます。日産はこの境目を、物理的でない、車内と車外の情報をつなぐものとして捉えています。

田井:「『日産 アリア』での『縁側』は、外界と車内をつなぐ情報空間です。奥行きのあるデジタルな3D空間を通した、情報と時間の流れを感じさせるグラフィカル ユーザーインタフェースです。」

行燈(Andon

古来の定義:半透過性の和紙のランプシェード。まぶしさをおさえ、柔らかく心地よい光になる。

「行燈」は家庭の照明に使われる紙製のランタンで、侍の時代から使われていました。木製のフレームに薄い紙が貼られており、中に備えられたロウソクが温かみのある光を放ち、周囲のものを引き立てます。

アローバ:「『日産 アリア』の内側にある『行燈』ライティングは、洗練されたリラックスできる光の空間を演出し、足元とドア周りの空間に視覚的な拡がりをもたらします。『行燈』の光で、心地よく落ち着いたムードが広がります。」

組子(Kumiko

古来の定義:日本の伝統木工の技法のひとつ。

高度に熟練した職人だけが手掛けることができる木工細工であり、複雑で美しい幾何学模様。何世紀にもわたり使用されています。

アローバ:「『組子』模様は、ガソリン車のグリル部分にあたる『シールド』に配置されています。スムーズな『シールド』の表面から見える『組子』模様は、電動化したVモーションシグネチャーを引き立てています。室内の行燈ライティングにも反復して、車両全体をモダンな世界観で統一しています。」

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