モーターショーは電気自動車の夢を見るか?

2019/10/26
  • クルマ・技術
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2年に一度の自動車の祭典東京モーターショー が開幕! 今回日産の出展する2台はコンセプトカーながら非常に現実に近い商品の提案となっています。ショーにまつわる様々なコンテンツを1つの特集にまとめ、「点を線」でつないでみると、日産の本気度が見えてくるかもしれません。

今年は輸入車の出展中止など「メーカーのモーターショー離れ」「中国シフト」を殊更に強調したがる報道が目立ちましたが、日本のショーで地元メーカーが提案する未来をじっくりご覧いただくという意味では本来の趣旨に立ち返ったとも言えるのではないでしょうか。むしろそうした状況や来年に控えた大規模スポーツイベントにより使用できる会場が制限されることで、65年目を迎える東京モーターショーのあり方を見つめ直し、時代に合わせて変革していくよい機会になったのではと考えます。

歴史

話は逸れますが東京モーターショーは1954年に日産による呼びかけでスタートしたのはご存知でしょうか? 「ミスターK」こと故片山豊氏(1909-2015)は「フェアレディZやダットサンを米国に広めた」という功績が有名ですが、米国日産(現北米日産)初代社長を勤める前は宣伝マンとして活躍しており、耐久品質を証明するために海外ラリーへ参戦したり、カラーフィルムによる車両プロモーション動画を制作して映画館で放映するなど、今では当たり前となった画期的なマーケティング手法を次々と手がけていました。

その中で「海外の自動車サロンのように各社バラバラに実施している新車発表会を一堂に会して品評会を実施しようではないか」と各自動車メーカーに呼びかけて調整し、実現したのが日比谷公園で開催された東京モーターショーの前身、「全日本自動車ショウ」です。生前の片山氏(撮影時105歳)が自ら当時を振り返る貴重なインタビュー映像をどうぞ。

NISSAN ARIYA CONCEPT

閑話休題。今回の東京モーターショーにおいて、プレスデーにサプライズでお披露目されたコンセプトカーが「ニッサン アリア コンセプト」です。

「何だ、また売りもしない絵空事のコンセプトカーばかり出して」というコメントもSNSで見受けられましたが、それは誤解です。コンセプトカーには2005年「PIVO」のようなピュアコンセプトもあれば、「GT-Rコンセプト」のように限りなく市販車に近いものもあります。

プレスリリースには、
 『ニッサン アリア コンセプト』は夢を追い求めるだけのコンセプトカーではありません。
 (中略)
 新しいドライビングエクスペリエンスを現実に提供するクルマです。
と明記されています。

アリアには前後に高出力電動モーターを配置したツインモーター4輪制御システムを採用しています。ただでさえ加速性能に優れ、バッテリが中央に配置されているためにハンドリング性能も高く、緻密な制御により雪道等での安定性が高いEVですが、さらにこの高性能四駆により様々な路面状況やスポーツドライビングでのドライバビリティに貢献します。コンセプトカーで具体的なパワートレインや駆動方式をコミュニケーションすることは珍しく、ここにも日産の本気を感じていただけると思います。

またアリアの発表の翌日、とある実験車両が報道関係者に公開されました。「電動駆動 4輪制御技術の開発を目的としたテストカー」とされたこのクルマは、「日産リーフe+」をベースに2基の高出力電動モーターを前後に搭載することで4WD化し、独自のシャシー制御を組み合わせた車両です。

さらにアリア発表の前日、「EVのF1」と言われる電気自動車レースの最高峰「フォーミュラE」の体制発表時に、新マシンとともにレーシングコンセプト車両である「NISSAN LEAF NISMO RC_2.0」がお披露目されています。先代リーフの際にも LEAF NISMO RCがありましたが、ベースの「リーフ」のモデルチェンジとともに新型が開発されました。
発表時には言及できませんでしたが、実は今年初頭に発売となった「リーフe+」の大容量バッテリーを先行で搭載し、「何故か」ベースのリーフにない四輪駆動システムが搭載されていました。

思い起こせば10年前、初代リーフ発表の前年(2009)と前々前(2008)にそれぞれ先述のテストカー同様EVの実験車両が報道陣に公開されていますね。

あとはお察しください。

「ニッサンIMk」

最近、「日本の自動車メーカーは国内市場を軽視している」との声をSNSで見かけます。過度に悲観的な報道の影響もあると思いますが、確かにここ数年は新車の端境期ということもありそう見られても致し方ない面もありました。

今回出展しているもう1つのコンセプトカー「ニッサンIMk」の名前のうち、「IM」はおなじみ「ニッサン インテリジェント モビリティ」、「k」は軽自動車から来ています。軽自動車のコンセプトカー、しかもEV版を日本の東京モーターショーで世界初公開するという姿勢から、日本市場への本気度度合いを感じていただければと思います。

日産デザインの新しい方向性

今回出展した2台のコンセプトカーを見て、「随分と既存の日産車とデザインが違うな」と感じた方も多かったのではないでしょうか?

フロント周りのVモーションやロゴの処理、横プロファイル、日本の伝統工芸に着想を得たインテリアなど、これまでの市販車やコンセプトカーからも変わってきているとお気づきかと思います。2つのコンセプトカーが示唆する日産デザインの未来は、こちらで詳しく説明しています。

EV時代の新たなデザインの方向性を示唆するコンセプトカー
エクゼクティブ・デザイン・ダイレクター 田井 悟が技術と緻密さで生まれ変わった日産ブランドのデザインを語る

このほか、デザインを統括する専務のアルフォンソ・アルバイサ報道関係者向けに実施したパネルディスカッションでは、コンセプトカー企画開発の背景について語っています。

記者会見全編録画

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