安全運転を科学する

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6時間未満の睡眠で事故リスクは約2倍に?

2024/03/15
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3月に入り、桜の開花が待ち遠しい季節になりました。「春眠暁を覚えず」と言うように春の眠りは心地よく、皆さんも朝、つい寝過ごしてしまったなんてことがあるかもしれませんね。今回の日産ストーリーズではそんな「睡眠」について、安全運転との関係を脳の研究結果も交えながらご紹介します。

「目の前にタクシーが2台来ました。そのうち1台の運転手は睡眠不足で、2台目より事故を起こす確率が30%高い。あなたはどちらのタクシーを選びますか?」

睡眠の専門家であるカリフォルニア大学バークレー校の神経科学・心理学のマシュー ウォーカー教授は、このような場面を提示し、睡眠不足がもたらす運転時の危険性について説きます。

「考えるまでもないですね。そしてあなたが運転をする際にも、自身の睡眠の重要性について同様に考えてほしいのです。」

北米日産では、ウォーカー教授とUXイノベーションを担当するシニアマネージャーのルチアン ギョルゲのチームが協業し、居眠り運転について分析を重ねながら、安全運転に繋がる睡眠のあり方を研究しています。

睡眠不足と交通事故との関連性

全米睡眠財団の調べでは、米国で居眠り運転による自動車事故が、毎年約10万件発生しています。そして、負傷者は7万1,000人、損害は1,250万ドル以上にのぼると推定されています。※1

睡眠時間と交通事故リスクの関係は、全米自動車協会交通安全財団の研究※2 でも明らかになっています。24時間以内に7時間以上の睡眠を取ったドライバーと、それ以下のドライバーを比較すると、交通事故のリスクは以下のように増加していきます。

• 睡眠時間6~7時間:1.3倍
• 睡眠時間5~6時間:1.9倍
• 睡眠時間4~5時間:4.3倍
• 睡眠時間4時間未満:11.5倍

これは、アメリカに限った話ではありません。公益財団法人高速道路調査会が行った調査※3 によると、日本においても居眠り運転による事故は、欧州と同様に交通事故の 2割程度を占める と推測されています。居眠り運転による事故では、ドライバーが危険回避をせずに衝突することで大きな被害が生じることがあり、高速道路における死亡重傷率は他要因の4倍以上とのデータもあります。

「適切な睡眠時間をとることによって、安全運転の責務を果たすことができるようになります。しかし、多くの人がその重要性に目を向けていないのが現状です。睡眠はコストではなく、より良い運転につながる投資だと考えるべきです」(ウォーカー教授)

安全運転を科学する
安全運転を科学する1:35

睡眠の質を高めるには

ウォーカー教授は、健康な成人は毎晩7~9時間の睡眠をとるよう心がけ、これを継続して習慣付けることが重要だと言います。

「睡眠の質を高める秘訣は、生活リズムです。同じ時間に就寝し、同じ時間に起床することでしっかりとしたリズムが生まれ、睡眠の質も量も改善されます。」

ここで睡眠の質を改善するヒントをご紹介しましょう。

睡眠の質を高めるには

日産による脳とパフォーマンスの関係についての研究

睡眠についてウォーカー教授と共同研究しているギョルゲは、脳の潜在能力を引き出すトレーニングプログラムブレイン・トゥ・パフォーマンスを統括しています。このプログラムは脳の特定の領域を刺激し、ドライバーの集中力や反応速度、判断力を向上させようという画期的なプログラムで、フォーミュラEチームや一般のドライバーと共に取り組んでいます。

「運転に長けているプロドライバーの能力を少しでも向上させる手法を発見できれば、一般のドライバーにも必ず応用することができるはずです。」(ギョルゲ)

これまでの研究で、プログラムを通じて脳への特定の刺激を受けたグループと、受けなかったグループには大きな違いが見られました。刺激を受けたグループは、半分のタイムで走行し、半分の時間でコースを覚えたことが明らかになったのです。

この研究結果について、ギョルゲは「筋肉の変化と脳機能の変化には、明らかに関係があることが分かりました。何度も同じ作業を繰り返すと、脳には特定の回路が形成されるのです」と説明しています。

脳トレーニングプログラム 「ブレイン・トゥ・パフォーマンス」
脳トレーニングプログラム 「ブレイン・トゥ・パフォーマンス」00:26

パフォーマンスを向上させる日中のトレーニングも夜間の就寝時間も、カギは習慣付けすることです。

ウォーカー教授は、「リズムがあると脳が習慣として認識するようになります。脳はこの習慣に反応して、睡眠の質と量を高めるのです」と述べています。

「ブレイン・トゥ・パフォーマンス」の結果を見ると、参加者の睡眠の質も高まっていることが分かりました。「睡眠の質が向上すると、より長時間にわたって集中できるようになるため、おのずとパフォーマンスも向上します。」(ギョルゲ)

日産による脳とパフォーマンスの関係についての研究

ルチアン ギョルゲ(左)が率いる「ブレイン・トゥ・パフォーマンス」プログラムに参加する日産フォーミュラEドライバーのサッシャ フェネストラズ(右)

本プログラムの主眼は、ドライバーの認識能力の向上です。ギョルゲは将来、ドライバーの安全運転支援につながる一般向けのトレーニングを日産が提供できるようになると考えています。

「クルマの点検のために日産の販売店に出向くことがあるでしょう。今は待ち時間に雑誌を読んでいるかもしれませんが、数年後には脳トレーニングを受けているかもしれません。点検が終わると、クルマが整備済みなだけでなく、あなた自身の運転技術も上がり、その夜はぐっすり眠れる。クルマ、運転技術、睡眠、全てがより安全な運転へとつながっていくのです。」

番外編 ―運転中の休憩を支援する技術

日産の最近のモデルにはインテリジェント DA(ふらつき警報)が搭載されています。ドライバーの眠気や注意力の低下を検知し、音と表示でドライバーに休憩を促します。

ドライバーが疲れたり注意力が低下したりすると、通常時と比べ修正操舵が多くなりハンドル操作が乱れます。インテリジェントDAがこれを検知して警告音が鳴り、メーター内にコーヒーカップのアイコンと共に「休憩しませんか?」とメッセージが表示されます。

また日本では、カーナビ使用時に連続運転時間が2時間になると、音声で休憩を促すリフレッシュ案内が掲示されます。

Time for a break

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