ドライバーに語りかけるクルマの音

バンダイナムコとのコラボレーションで生まれた新しい情報提示音

2021/06/07
  • クルマ・技術
facebook
X
linkedin
mail

ビデオゲームと日産の新型車には共通点があります。それは一体何でしょうか?
答えは、「音」に隠されています。

クルマは、ドライバーにたくさんのことを語りかけています。と言っても、あまり意識したことはないかもしれませんね。例えば、ドアがきちんと閉まっていないときや、シートベルトが外れているときなどにピーと鳴る警告音。これらの音を通じて、クルマは人とコミュニケーションしています。そして、これらの音がドライバーに正しく伝わることは、クルマに乗る人の安全を守るために、とても重要なことなのです。

今回、車内の情報提示音を開発する日産のサウンドエンジニアは、ゲームメーカーであるバンダイナムコのサウンドクリエイターの協力を得ながら新しい「音」を開発することにしました。この新しい音は、日本の新型「ノート」、米国の新型「ローグ」と「パスファインダー」、欧州の新型「キャシュカイ」に搭載されており、今後も日産の新型車に搭載されていく予定です。

バンダイナムコは、ご存知のとおり「パックマン」や「太鼓の達人」など数々の名作を生み出しているゲームメーカーで、ゲームの世界での音づくりに幅広い知見を持っています。そのバンダイナムコの協力を得ることで、ピッチ、テンポ、トーンを駆使して情報を伝える、高品質なクルマの音を開発する。つまり、クルマの「声」に、もっと個性や特徴を持たせることを目指したのです。

PAC-MAN™&©BANDAI NAMCO Entertainment Inc

「車内の情報提示音を、より聞きやすく、エモーショナルなものとする。その上で、日産ブランドを感じられる音にすることを目指しました」(鈴木広行。日産のサウンドエンジニア)

バンダイナムコのサウンドクリエイターは、プレイヤーの直感的な理解を促すため、ゲームの世界観とゲーム内で起こるさまざまなシーンやイベントにマッチした音をつくっています。同様に、クルマに乗っているときに発生するさまざまなシーンで、ドライバーに直感的な理解を促す音。そして、日産のグローバルモデルの代名詞となるような音。日産とバンダイナムコは、そうした音を一緒につくりあげました。

鈴木広行
髙橋みなも

人に情報を伝えるための音づくりには、心理学的なアプローチが欠かせません。そのことを最もよく理解しているのは、世界中のゲーマーに直感的に理解される音を日々つくっているビデオゲームのサウンドデザイナーです。

バンダイナムコ研究所のサウンドディレクターである髙橋みなもさんは、ゲームのサウンドは大きく分けて二種類あると語ります。一つはゲームの世界観やストーリーの展開を表現するための演出的なサウンド。もう一つはゲームをプレイする際に、プレイヤーに必要な情報を与えるための機能的なサウンドです。

「クルマに乗り込んだときに見えるものや感じるもの。それらはいわば、『クルマという演出』なのだと思います。その演出を壊すことなく、ドライバーの運転操作や周囲の危険に応じて必要な情報を与える音。それはどのような音であるべきか?そうしたことを考えたときに、ゲームでの機能的なサウンドをデザインしてきた経験と知見が生かされたのではないかと思っています。」

そう語る髙橋さんですが、ゲームがどれほどリアルに近づいても、現実世界で機能する音をつくる際には、まだまだ大きな違いがあるのだそうです。

「クルマの音づくりの過程は、まさに『生みの苦しみ』という言葉通りの非常に濃い時間でした。スタジオに何日もこもって、日産のサウンドエンジニア、商品企画、デザイン、実験部門の皆さんといろいろな議論をして、日産ブランドにふさわしい、わかりやすく、かつエモーショナルな音とは何かを試行錯誤しました。」

ブランドイメージにあう音色ができあがると、次はドライバーに伝える情報の緊急度や重要度に応じて、音色のバリエーションをつくることになります。人は音の吹鳴周期(テンポ)で緊急度を認識し、周波数(高さ)によって深刻度を認識することが研究で明らかになっています。

「直感的にどの程度の緊急度や重要度なのかを理解するために、それぞれの音をグループに分け、音色で差別化する工夫をしました。たとえば運転支援に関わる音や、クルマの故障やエラーを知らせる音といったように機能でグループを分ける。そして、そうした機能を想起させる音色と音をつくっていきました。」(中村美和。日産の人間工学実験エンジニア)

中村美和

羽藤洋志

開発したのは新しい音だけではありません。新しい音をドライバーに伝えるためには、スピーカーも新たに開発する必要がありました。一般的に使用されているモノトーンのブザーでは、せっかく両社でデザインした深みのある音を出すことができなかったのです。

「単一のブザーでは表現力に限界があり、耳当たりの良い、高品質な音色を出すことができません。そこで新しいスピーカーを開発しました」(羽藤洋志。日産の車両システム設計エンジニア)

情報提示音専用につくられた新しいスピーカーは、重要な警告音をオーディオスピーカーからの音と区別できるようにするため、運転席前のダッシュボードに収めました。

日産とバンダイナムコのパートナーシップは、素晴らしいハーモニーを生みだしました。日産のエンジニアは、ゲームクリエイターから新しい視点を得ることができましたし、バンダイナムコのゲームクリエイターは、サウンドデザインの新しい応用を楽しむことができたのです。

バンダイナムコの髙橋さんは、実際に車内で鳴っている音を聴いたとき、自分が手がけたゲームを初めてプレイしたときと同じ感覚にとらわれたそうです。そして、業界は違っても、ものづくりが完成したときの達成感は共通なんだと、今回のコラボレーションを振り返りました。

新しくなった日産のクルマの「音」。こちらからぜひ聴き比べてみてください!

従来の音 新しい音
半ドア警告
シートベルト締め忘れ
ライト消し忘れ
キー車外持ち出し
ウインカー
後退

ストーリーをシェアする

facebook
X
linkedin
mail

最新の日産ストーリーを受け取る

最新の日産ストーリーを受け取る

おすすめのストーリー

2023/07/20

GT-Rを追いかけて

  • クルマ・技術
  • People

2023/08/09

快適な「陸」の旅を!プロパイロット2.0と共に

  • クルマ・技術

2023/06/21

技術職に就く女性を勇気づけたい

  • People